院長コラム
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- 精密治療(マイクロスコープを使用した治療)の必要性について
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マイクロスコープを使用する理由はただ1つです。
“拡大して見える”ただそれだけなのですが、それが歯科医療において非常に重要です。
日本における根管治療の成功率は50%以下です。これはマイクロスコープでの治療を勉強している歯科医師なら知っている方は多いと思いますが、統計として論文発表されています(日歯内療誌32(1)1~10 2011 SUDA Hideaki)。2011年の論文ですが、2024年現在でもそれ程変わっていないと予測されます。
原因としては、日本の根管治療ではラバーダムを未使用で根管治療を行う場合がいまだに多いため、治療中に細菌が根管内に入る事と、マイクロスコープを使用せずに治療を行うため、感染源の除去が難しい事が考えられます。
肉眼での治療には本当に限界があり、私自身はマイクロスコープがないと怖くて治療ができません。
根管治療だけではなく、同じ理由で、むし歯治療などの一般般的な治療にもマイクロスコープなしでは治療を⾏うことはあり得ません。私は過去に何度も同じようなコラムを書いています。一人一人の患者さんの治療が終わる度に、“マイクロスコープ治療でなかったら、診断、治療、治療結果も大きく違っていただろうな”と実感しているからです。
人生が長くなった現在において、ご自身の歯で食事をする重要性は高く、高齢になって出来るだけ歯で苦労しない方が良いと考えています。
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- 自費のクラウン(被せ物)について
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現在はジルコニアを使用したクラウンを自費診療で使うことが多くなりました。
同じジルコニアクラウンを装着するにしても、歯科治療にはたくさんの工程があり、一つひとつの工程がきちんと行われていないとクオリティーの高いクラウンを口腔内で機能させることはできません。
その工程とは
- 形成:形作り
- 印象:型取り
- 技工作業:歯科技工士さんがクラウンを作成
- 調整:噛み合わせを調整
- 研磨:表⾯の傷が残らないように研磨
- セット:セメント付け
- 【形成】
アウトラインを真っ直ぐに作ります。マイクロスコープを使用することにより、クラウンと歯の隙間を最小限にすることができます。肉眼では確認できないくらいの隙間があると、細菌が侵入/停滞し、その部分から再度虫歯になる可能性が高くなります。 - 【印象】
精密印象材(シリコン)を使用し、印象時の誤差を最小にします。 - 【技工作業】
歯科技工士さんの技量がクラウンの適合度や形/色に反映されます。フィッティングに関してはマイクロスコープを使用すると飛躍的に良くなります。 - 【調整】
噛み合わせの調整は数ミクロン単位で行います。ジルコニアは硬い素材のため、噛み合わせが数ミクロン高いだけでも歯の周囲組織に悪影響を及ぼす場合があります。 - 【研磨】
ジルコニアは現在使われている歯科材料の中で最も硬いため、研磨がきちんと出来ていないと対合の歯を傷つけます。クラウンの調整時に出来た傷を無くし、ピカピカになるまで研磨します。しっかり研磨できたジルコニアクラウンは対合歯を傷つけません。 - 【セット】
クラウンセット時に噛み合わせが高くならないようにセメントを正しく使用し、セットします。セメント硬化後は周囲に残ったセメントを綺麗に除去します。
これらのステップのどの過程でもきちんと出来ていなければ良いクオリティーのクラウンは出来ません。
そのためには、ほとんどのステップにおいてマイクロスコープを使用し、拡大して作業、確認をすることが必要になります。私自身が肉眼で作業したものとマイクロスコープを使用したものを比べても、そのクオリティーに大きな差があります。
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- マイクロスコープ治療について
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私が根管治療を受けるなら、マイクロスコープとラバーダムを使用しない歯科医院には絶対に行きません。
また、通常の歯科治療においても拡大率が8倍以上の拡大鏡かマイクロスコープを使用しない歯科医院には絶対に行きません。(8倍の拡大鏡はメガネにつけるタイプで、見た目が長いものです。短いものは2倍〜4倍です)人間の視力の限界は直径200ミクロン(0、2mm)だそうです。それ以下のものは正確にそれが何かは判別できません。
私は毎日マイクロスコープを使用しております。マイクロスコープを使用しないと、正確な診断や治療ができないことを知っているからです。きちんと見えていないのに診断や治療を行うことが怖いのでマイクロスコープを100%の患者さんに使用しているのです。
患者さんにとってはマイクロスコープを使った治療とそうでない治療の違いは分かりづらいと思いますが、マイクロスコープの映像(なかまる歯科のHPであればトップページにあります)を見ていただければその違いをわかっていただけると思います。私が肉眼や低倍率の拡大鏡では怖くて治療ができない理由をご理解いただき、その価値を知っていただければ幸いです。
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- 超高齢化社会と歯科
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未曾有の「超高齢化社会」を迎え、医療サイドとして、色々な事を考えなければならない時代になりました。延命処置の問題や、健康寿命の問題などです。
歯科の場合、直接、命に関わる事はほとんどないのですが、健康寿命の延長や、生活の質の向上(Quality Of Life)には大きく寄与しています。きちんとした治療を受けると、口腔内が安定し、きちんと食べる事ができる事が理由です。
しかし、そこで大切なことは「きちんとした治療」ということです。そして、歯科医師が、「きちんとした治療とは何か」を知っているということです。
80歳代や90歳代で、食べる事に苦労している人(痛くて食べる事が辛い)は沢山いらっしゃいます。もう少し若い時に「きちんとした治療」を受けていれば、辛い思いはしなくて済んだのに、徐々に歯が悪くなり、最終的にそのようになってしまうケースが沢山あるのです。
そこまで来ると、お金では解決できない問題になってしまいます。正直申し上げると、その年代では、歯科医療を受ける体力的な問題や、全身的健康面の問題が発生している事が多く、「きちんとした治療」を行う事が難しくなってくるのです。
超高齢化社会を迎えた今、歯科医師も、患者さんも、老後のために何が必要なのかを熟考し、実践する事が必要になっているのです。歯科医師はその患者さんの10年後、20年後がどうなっているのか予測できる技能が必要になります。その治療をする事により、その患者さんの一生はどうなるのかまで考えられなければならない時代になったと思います。
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- 歯科医師として
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「せっかく高い保険料を払っているので、歯科治療には保険を使いたい」という患者さんのご希望は痛いほどわかります。また、患者さんは「歯科医院に行けば歯は治る」と思っていらっしゃると思います。しかし、歯科の場合、ここに問題があります。
保険制度が制定されたのは、1961年のことです。2016年現在において、科学も、社会的背景も、人の健康に対する価値観も全く違っているのですが、歯科における治療法や価値観は、当時とあまり変わっていないのが現状です。(おそらく医科はそうではありません)少なくとも私が歯科医師になった1993年(平成5年)から2016年(平成28年)の約20年間で、保険診療内容において大きく改善されたことはありません。
ご存知の方も多いと思いますが、アメリカには皆保険はありません。すべてプライベートの保険です。そこは患者さんも歯科医師も、科学的な根拠に基づいた、厳密な治療が当たり前です。ですから治療後も歯自体が長持ちするのです。これは私がアメリカに長期留学した経験からはっきりと申し上げることができます。
私は日本の歯科医師はもともと優秀で、とっても器用だと思っています。しかし、保険治療が長きにわたって当たり前になってしまった現在の日本では、治療に対する考え方が、現在の科学や時代背景、患者さんの価値観に合わなくなってきているのです。昭和の時代はこれでよかったのですが、この点について、日本の歯科医師も早く気づかなければ、本当の意味での良い歯科医療を施すことは不可能です。
患者さんには保険診療で何が起きているか知る術はほとんどないと言っていいと思います。なぜならほとんどの歯科医師が「日本の治療は世界水準を超えている」と思っているので、保険診療のレベルが普通以上のことだと信じて疑わないからだと思いますが、私のように発信する人間がほとんどいないのです。
日本の保険制度や、それを使った治療に疑問を感じている歯科医師は、人間として本当の正義や優しさとは何かを考えた時、自らの医院経営に不利になろうとも、その使命を全うし、きちんとした治療を行うべきだと思います。実際、そのような考えで自由診療に移行した歯科医師は、まだ数少ないですが存在します。
歯科医師の考え方や倫理観が、患者さんの一生を左右するといっても言い過ぎではないのです。
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- 治療は1日5人まで
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私は、1日に拝見する患者さんを5人までにしています。その理由は、私の患者さん、お一人お一人を本当に大切にしたいからです。
きちんとコミュニケーションをとりたい
コミュニケーションの中から患者さんのご希望や、病気や欠損になった理由、生活習慣などをお伺いする事は、歯科医療において、最も大切な事の一つです。
私は、救急の場合を除いて、初診の日から治療を始める事はありません。なぜなら歯科治療は、歯を削る事が多く、一度手をつけると、元に戻らないため、安易に治療を始める事は非常に危険だと考えているからです(アメリカでは常識的です)。これを不可逆的医療行為と呼び、いかなる治療も、始める前に慎重に慎重を期して行われなければいけません。
また、治療を開始する前に、きちんとお話させていただく時間も必要になります。これから始まる治療を、きちんと納得していただくためです。
きちんと精密治療したい
治療にはミクロン単位の精密な治療が必要です。人工物と歯の隙間から、再度虫歯になったり、根管治療の失敗(日本の一般的な治療法では50%に慢性炎症が起きます。慢性炎症なので、普段は痛くも痒くもありませんが、根の先の周囲骨が吸収する病気です。日本では根管治療の後、頻繁に見られます。
(詳しくは根管治療の項を参照してください)
きちんと治療計画を立てたい
精密治療と同じくらい(それ以上)大切で、治療の成否をきめる一番の要因です。こちらも長期的予後のためです。行き当たりばったりの治療は歯の寿命を短くします。
保険診療、保険診療併用の自費診療と、自由診療が違うところはこの3つの部分と言っても良いと思います。
スピード重視の治療からクオリティー重視の治療へ。要は、考え方の違いなのですが、この「考え方」の違いが、患者さんの将来にとって大きな違いになって現れて来るのは間違いありません。
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- クオリティーの高い歯科治療は
将来に対する投資です -
- 年をとっても自分の歯でかめること
- また、その残っている歯が健康な状態であること
この2点は皆さんがお年を召した時に非常に重要になります。
なぜなら、- 口腔内からきちんと食事をとることにより元気でいられる
- 年をとった時、健康上の問題で、歯が痛くてどうしようもなくても抜歯ができないかもしれない
そのためには、
- 治療跡のある歯が出来るだけ少ないこと。また、治療の必要な歯は、適正に治療されていること
- インプラントの数が出来るだけ少ないこと
- 入れ歯ではないこと(特に部分入れ歯)
- 年齢と口腔内全体の状態をしっかり考慮し、計画に基づいた歯科治療を受けること
若いうちは、年をとった時のことなど考えられないと思います。
特に、特別痛みがない限り、普段は口腔内の健康などあまり考えていない人が多いのですが、ご自身が年をとって、80歳以上になった時(場合によっては70歳代でも)、そこから歯がどんどん悪くなっていったらどうしますか?その時に健康上の問題で歯科治療を受けることができない場合は?寝たきりになっていたら?できれば元気な50代、60代でクオリティーの高い治療を受けられることを推奨します。年をとって辛い思いをする人を増やしてはいけません。また、クオリティーの低い治療はむしろ歯をダメにするということも敢えて加筆したいと思います。
「一生何も食べることに苦労がなかった」というのは、超高齢化社会を迎えた現代において、また、日本の過去、現在の歯科医療を取り巻く環境も相まって、非常に難しくなってきていると思います。
- クオリティーの高い歯科治療は
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- 保険制度の問題について(歯科医師編)
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健康保険では、健康診断や矯正治療は禁止されている。
病気にならなければ医療を受けてはいけないことになっている。
ショッキングだが、これらは法律に明記されている。これでは予防という観念には沿わない。また、歯科治療は、歯を完全に元に戻せるものではない。このような保険の概念に基づいた歯科治療では、平均寿命が延びた現在において、患者さんが年を取った時、歯の事で苦労するのは明らかだと考えられる。
日本の保険制度では、噛み合わせや顎位を診る(診断する)ということはしない(制度上出来ない)。犬歯誘導がない所に、硬さに自由度のない金属(金パラ)を入れるので、側方運動時の干渉により歯槽骨の吸収、歯根破折が起きる(人為的に歯をダメにしている)ケースがやたらと多い。この場合、自費診療でセラミック冠を入れても同じ事である。根管治療が適切に行われていない状況では、更にリスクが高まる事は言うまでもない。
これが本当に患者さんの事(人生)を考えた治療と言えるだろうか?また、保険診療を行うすべての患者さんに、そのリスクを説明することができるであろうか?時間的にも、知識的にも難しいのではなかろうか?
患者さんは、一人一人違う事を認識し、リスクの少ない、また、患者さんにメリットのある歯科治療を行うべきではないだろうか?歯科医師としてすべき事を再考する時ではないかと思う。昭和の虫歯が氾濫していた時代と同じ事をやっていても、私たちも患者さんも誰も幸せになる事はできない。
多くの歯科医師が自由診療を「贅沢な治療」「審美治療」「インプラント」「矯正」などと考えていると思う。が、それは間違いで、もっと深い歯科医療を目指せば(知れば)その考え方も違ってくるだろう。私は、将来的に、保険診療を「最低限の治療」として国の事業にしてもらい、きちんとできる歯科医師は適切な治療を、本来の歯科医療として患者さんに提供するべきだと思う。
保険点数が低いから保険外診療に走るようなものではない。その本当の意味を理解し、実行できる歯科医師が、日本にも増える事を望んでいる。
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- 自由診療のすすめ
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私が自由診療に移行し、1年が経過しました。最初は、患者さんに、その意味をしっかり理解していただけるか本当に不安でした。が、現在では、本当に自由診療に移行してよかったと思っています。その理由として、
お一人の患者さんに時間をかけることができるようになったため
- 十分にコミュニケーションの時間を取れるようになった(患者さんの悩みやご希望や過去の治療時期などの問診をしっかりできるようになった)
- 技工士さんとの話し合いの時間が長く取れるようになった
- 精密な治療が可能になり、審美的、機能的な治療がより良くなった
- お一人の患者さんの状態について、しっかり考える時間を取ることができるようになった
- 診断のための資料取りの時間を取れるようになった
- 並列診療ではないため、お一人の患者さんに集中することができるようになった
保険の枠にとらわれないため
- その患者さんに適した材料や方法を選べるようになった
- 一度にできるだけの治療をすることが可能になった(患者さんの来院回数を少なくすることができるようになった)
- 本当の意味での“全体的な治療”が可能になった
しっかりした仕事ができるため
- 自分の仕事への満足感や自信度が高まった
- 患者さんの治療への満足度が高まった
- スタッフの仕事に対するモチベーションを高くキープできる
時間通りに仕事が終わるため
- 家族との時間を過ごすことができる
- 自分の勉強や趣味の時間を取ることができる
- 体力を温存できるため、次の日の診療にも集中することができる
保険がなければ困る患者さんはたくさんいらっしゃいます。が、保険があるから困っている患者さんもたくさんいらっしゃるのも事実です。
日々、診療にあたられている先生方に理解しやすい一例をとると、根管治療が最もわかりやすいのではないでしょうか?
一生懸命保険制度の中で治療しても、患者さんは感染を起こして根尖性歯周病を起因してしまう。これはラバーダムとマイクロスコープを利用して治療すれば感染を起こさずに済んだケースと言えないでしょうか?
一度感染してしまった根管治療はさらに難しくなりますよね。結果的に患者さんは歯を失うことになります。ですから私は、保険で根管治療された歯にセラミック修復を行う勇気も自信もありません。セラミック冠など、保険の効かない修復物を装着する時は、自分も患者さんもリスクが少なく治療を行う為に最初の根管治療の段階で、きちんと治療が行われるべきだと思うのです。
保険で治療された根管治療の50%が失敗しているという事実をご存知でしょうか?ご自身の根管治療の成功率はどのくらいですか?これでご自身も患者さんも幸せですか?
自由診療はお金の為の治療ではありません。お金の為なら私とは違う方法が良いと思います。患者さんの幸せ、また、ご自身の幸せの為に、いま一度、診療体系を見直してみるのはいかがでしょうか?
ただし、自由診療の価値を患者さんに認めていただく為には、知識やロジカルな考え方、技術などのソフト面と、医療機器、などのハード面の充実が必要だと思います。
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- 小児の虫歯治療について
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歯科関係はない方でも、自分の子供の永久歯が生えてくる時期はご存知だと思います。初めて永久歯が生えてきた時は、親として子供の成長を感じ、 感慨深いものです。
しかし、子供の永久歯は、表面構造が柔らかく、溝も深いため、虫歯になるリスクが非常に高いものです。特に6歳臼歯は、奥に位置しているので磨きづらく虫歯になりやすい傾向にあります。実際、私が学校医を務める小学校の検診でも永久歯の中で最も虫歯の罹患率が高いのです。
一度虫歯の治療を受け、そこに微細な隙間があれば、そこから2次虫歯になる可能性がありますし、虫歯が深い場合には神経の処置(根管治療)をしなければならない可能性もあります。
根管治療を受ける場合、ラバーダムをしないで治療を受けると、根の先に炎症を起こし、人生の早い段階で6歳臼歯を抜歯しなければならない可能性があります。
6歳臼歯は、犬歯と同様、口腔内のバランスをとるために非常に重要な役割をしていますので、それがなくなってしまうと、将来、口腔の問題を発症しやすくなります。
- まずは歯に虫歯をつくらない(予防)
- 虫歯になったらラバーダム下、拡大視野下できちっと直す。
(子供の口腔内は唾液が多く、ラバーダムなしにきちんとした虫歯治療を行う事は困難で、また、虫歯と健康な歯の境目が非常に曖昧なので、拡大視野下で虫歯の部分と健康な部分をしっかり見極める必要があります。) - 不幸にも神経まで虫歯が到達して、根の治療が必要になったら、ラバーダム、マイクロスコープを使ってきちんと根管の中をきれいにする。それにより、根管治療の成功率を高くする。
(現在の日本の根管治療の成功率は50%といわれています。これは、先進国の中で最も低く、日本の根管治療の方法そのものに起因します。)
子供は通常、自分で歯科医院を選ぶ事が出来ません。親の通っている歯科医院か、自宅の近所で、通院に便利な歯科医院に行っている事がほとんどだと思います。
口腔内の健康だけでなく、体の健康を生涯に渡って保つためには、子供の時分から、歯科治療の質はとても大切です。子供の歯でも永久歯は一生ものなのです。子供の将来の健康を守るのは親の役目であり、責任だと思うのです。そして、歯科医師もその覚悟で治療に当たらなければいけないのは言うまでもありません。
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- 私の仕事観
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私の幸せは、自分の仕事内容に対して満足できて、その結果について患者さんが将来にわたって満足してくれる事。
治療させて頂いて、良い結果が出れば歯科医師の仕事は本当に楽しいのです。良い仕事が出来れば私は本当に幸せです。そして、将来的に患者さんも幸せに過ごせる(少なくとも不幸にはならない)と思います。
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- きちんとした歯科治療の価値について
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60歳代以上の年代で、自分の好きなものや、美味しいものを食べることができ、楽しく話せて、笑えて、肉体的にも精神的にも健康でいられる事がどれだけ幸せな事か、若い頃はなかなかイメージできないと思います。
私は2016年で、歯科医師になって22年が経ちました。その間、いろいろな患者さんを拝見してきました。そこで気づいた事は、70歳代、80歳代で歯の事で悩みがある場合は生活自体が大変になるという事です。
きちんと、診断、治療方針、治療計画を理解していただき、良い結果が出れば、たとえ治療費が高くてもその価値があると思いませんか?
歯は一生ものです。そして、お金で買える"物"ではありません。患者さんの体の重要な一部なのです。
きちんとした口腔内を保ち、私たちの患者さんには豊かな人生を送っていただきたいものです。
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- 私が日本の保険を辞めた理由
(自由診療の意味) -
私が日本の保険を辞めた理由は、非常にシンプルです。
「きちんと丁寧な治療を行いたい」という思いでした。もし、「お金を儲けたい」と思うなら保険で、1日に30人の患者さんを拝見したほうが儲かります。しかし、そのような事をすれば、私が治療したところから患者さんの歯が、将来的に悪くなっていくのは明らかです。
何故なら、時間に追われた治療では(少なくとも私の場合は)治療や診断が雑になるからです。きちんと丁寧な治療を行うと、
- 患者さんの歯が長持ちする
- 私やスタッフが仕事に対して満足/安心できる
などの大きなメリットが患者さんと私どもの双方にあります。
歯科治療は、治療を行った後の予後が大切なのであって、治療を終わらせる事が大切ではない事を知っていただきたいのです。
治療費は確かに高くなりますが一生涯において歯を長持ちさせること。また、将来的な歯科にかかるコストを低くすることを考えると、自由診療は大きな意味があるのです。
日本の社会全体的に歯科に対する患者さんの意識は、徐々に高くなっているように感じます。時代の流れのなかで、いままでの歯科医療を受けてきた人たちの心の叫びが聞こえてくるようです。
- 私が日本の保険を辞めた理由
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- 健康に対する価値観
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私は自分の体を大切にしますので、特に食べ物(食材)にはこだわります。
例えば、スーパーマーケットで、
- 安くて、沢山パッケージされている鶏肉
- 高くて、少ししかパッケージされていない鶏肉
私は贅沢なようですが、2番を選びます。
1番目は、大量生産するために、狭いケージの中で運動もできない状態のまま、抗生物質やホルモン剤を含んだ餌を使っているもの。
2番目は、は、健康的な環境で無害な餌を使っているもの。
食べ物は、体の基礎を作るものですので、多少高くても安心なものを選びたいと思います。
歯科医師選びは、それ以上に慎重になるべきだと考えています。一度の判断ミスや診断ミス、操作ミスがその歯の運命を左右する事が多いからです。健康はお金では買えません。病気になって、将来困らないように、食べ物や医療を取捨選択することは、非常に重要な事だと思います。
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- 時代はどんどん変わります
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時代はどんどん変わります。それに伴い、世界の歯科医療はどんどん変わります。しかし、日本の歯科医療はほとんど変わりません。
20年前、どの街にも、あちこちにカメラ屋さんがあり、フィルムの現像をしてくれていました。しかし、カメラがデジタル化することにより、フィルムの現像が必要なくなると、軒並み街からカメラ屋さんが無くなりました。また、レンタルレコード/レンタルビデオのお店が沢山あったのは記憶に新しいですが、今ではどこにもありません。これは、PCやスマートフォンの発展によるものです。
歯科医療においても、世界的に見て、噛み合わせの考え方や、丁寧な治療はどういうものかなどの、ベースは何も変わっていないものと、すごく変わったもの、例えば、インプラント/セラミック/接着/マイクロスコープ/CAD/CAMなど、いろいろですが、ベースの上に新しい技術やテクノロジーが積み重なり、考え方を含め、急激に変化しているのは誰も否定できません。
時代はどんどん変わっていますが、日本のほとんどの歯科医療は20年前とほとんど変わっていないのが現状です。変わっていないというよりも「変われない」といった方が正解なのかもしれません。
日本の場合、国民皆保険が根底にあり、これが変わらない限り日本の歯科医療は変われないのです。また、日本で歯科医療をしていると“法律的に間違ったことをしていないので、これでいいのかな?という錯覚に陥りがちです。
インターネットが発展した現在、この矛盾は歯科医師よりも患者さんの方が気付かれているように感じます。しかし、患者さんがその違いをきちんと理解するには、歯科医療はあまりに専門的です。
特に日本の場合、何が正しい歯科医療で、何が間違っているかということを歯科医師自身が理解する必要があるのです。私自身も勉強を怠ることなく、正しい歯科医療を行い、また、急激に変化する状況に対応しなければいけないと痛感する毎日です。
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- なぜ?歯科医師選びが大切な理由
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患者さんは体の病気になった時には必死で優秀な外科医を探すのに、虫歯など、歯科疾患にかかった時に、なぜ歯科医を必死で探す人が少ないのか? という疑問が私にはあります。
歯科は直接、命に関わることはほとんどありませんが、一度歯医者が手をつけてしまうと、歯は元に戻せませんし、自己治癒をしないので、どうしようもなくなってしまうか、直せたとしても妥協しなければならない(きちんと直せない)という場面に直面することがあります。
例えば、下の患者さんは、右上4番(向かって上左の真ん中から4番目)の周囲から出血することを主訴に来院された患者さんです。
ご本人は歯周病ではないか?ということでしたが、実際には歯が割れていて、保存不可能でした。
臼歯部にはセラミック冠が装着されていますが、根管治療が十分に行われていないために、多くの歯の根の先に黒い影があります。これは、細菌感染のため、根の先周囲の骨が破壊されている状態なのです。きちんと根管治療が行われていればこうなる可能性は低いのですが、こうなると、歯の病気というよりは、「骨の病気」になっているわけです。
日本ではこのような患者さんは決して珍しくなく、むしろ、先進国の中では多い(最も多いかも?)です。ここに、この患者さんのレントゲン上だけでの問題を抽出してみます。
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- 黄色矢印
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根尖病巣
(根の先周囲の骨が溶けている状態)原因は根管治療不良と思われます。
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- 赤色矢印
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根破折
原因は水色矢印で示した太めのメタルポストと咬合力分散不良。
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- オレンジ矢印
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不良補綴/不良修復
(クラウン等と歯に隙間がある)隙間から虫歯や、感染根管の原因になる細菌が漏洩します。
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- 水色矢印
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歯の太さに対して太いメタルポスト
(土台)歯の破折の原因になります。
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- 緑色矢印
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不完全な根管治療
感染根管による根尖病巣(黄色矢印)の原因になります。
人為的に不適切な治療が行われたところからのみ、問題が起きていることがご理解いただけるでしょうか?
この患者さんの場合、根管治療をきちんと行われれば(マイクロスコープとラバーダムは必要)根尖病巣は治ると思います。しかし、最初からきちんと治療できていれば感染根管を起こし、治療の予知性が悪くなることもなかったと思われます。きちんとした診断と治療の重要性、また、術者によって、患者さんの将来が決まってくることがよく分かるレントゲン写真です。
ちなみに、クラウンやブリッジはセラミック冠ですので、費用は相当かかっていると思います。いつも思いますが、歯科において、費用対効果は本当に大切です。お金は誰にとっても大切です。その大切なお金を使うのであれば、費用対効果が高くないといけないと思います。
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- 昔と今:時代の移り変わり
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どんな専門職でも、昔は(1990年くらいまで)主に経験と勘が頼りだったと思います。
今は、コンピューターの発展とともに、例えばパイロットであれば、GPSやレーダーなど、様々な計器が発達し、航空機の遭難や事故が少なくなりました。
しかし、それらの機器を使いこなす必要があります。そのためには、勉強しなければならないし、練習もしなくてはいけないのだと思います。
歯科医療の場合、機器が発展していることは間違い無いのですが、それらを使いこなさなくても、(導入しなくても)昔のままの治療でも、事故につながることはあまりありません。しかし、昔がそうであったように、歯を失い、入れ歯になる事が前提の治療になってしまう可能性が高くなります。
もちろん経験と勘は大切ですが、歯科医療の進歩とともに歯科医療は、「経験と勘」のみで行えることはなくなりました。歯科医師に限らず、専門職に就く人たちは常に勉強、練習を怠ってはいけない時代になっていると感じます。
また、時代の移り変わりが早くなったのは、コンピューターという、人類が、昔は持っていなかったものを持つようになったからなのでしょう。
歯科界においては、2年や3年も勉強をサボってしまうと、きっと、もう追いつけないような時代になりました。常に向上心と好奇心を持ち続けることが大切なのだと思います。
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- 耐震強度
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昨今、マンションの杭(くい)に不正があったと、大きな社会問題になっています。
マンションの住居部分を歯の見えている部分だとすると、根管治療、歯周治療は、「杭」の部分に相当します。
いくらゴージャスなクラウンを入れても、杭の部分が不安だと、傾斜マンションのようになりますね。見えない部分だからこそ大事なのです。
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- 保険でガッツリ???
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最近(平成27年9月)で、歯科医師に一番売れている本は、「100%保険診療でもガッツリ稼げる方法」という本です。これはアマゾンでも買うことができます。
患者さんのためではなく、自分の収入のために、どうすれば保険で患者さんの歯を犠牲にして効率的に儲けるかという内容です。
私は、保険診療自体に疑問を感じているのですが、それ以前に、その本の内容に対し、憤慨しています。
そこには歯科医師としての正義や倫理などは全く存在しません。利己主義の極みといっても過言ではありません。こういう本を買った歯科医師はどのように感じているのでしょうか?
そして、その人たちは、その方法を実践しているのでしょうか?それは、法律的には問題ないかもしれませんが、歯科医療的にはめちゃくちゃな内容ですので、患者さんが「何かおかしいな?」と気付くまで、保険治療で歯がどんどんダメになっていくわけです。これでは、患者さんが真面目に歯医者に行けば行くほど歯がダメになっていっても不思議ではありません。
歯科医療に対して、また、歯科医師に対して不信感を抱く人が増えても仕方がない状況をどのように払拭していくか?本気で考える必要があると思いますが、他の歯科医師の方々はどのように思われますか?そして、患者さんは自分の体は自分の判断で守るしか方法はないのでしょうか?歯科医師の倫理と正義が保たれ、患者さんの歯が守られる事を切に願っています。
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- 自由診療と美容歯科の違い
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最近の風潮により、「自由診療」と聞くと、「美容歯科」や「インプラント専門」などを想像される方が多いようです。
しかし、私たちの「自由診療」はそうではありません。先ず、私たちにとって、「見た目」や「インプラント」は「特別なもの」ではありません。
「自由診療」では、「審美」「機能」にこだわり、「機能が良いために審美が長持ちし、見た目も綺麗」でなければいけないと考えています。
私は、「審美」という言葉にこだわります。歯には機能があり、その機能をうまく治療(コントロール)出来ていないと、その見た目は長続きしないのです。それが私たちの考える、「審美」と「美容」の違いです。また、インプラントも、全体的な機能を考えた上での治療でなければいけません。
そこには、「包括診断」と「精密治療」が必要になり、「包括診断」と「精密治療」を行う為には、保険の規制を受けない「自由診療専門」である必要があります。
保険の規制を受けないのは美容歯科も一緒ですが、私が自由診療を行っている理由とは違います。
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- シニア世代と歯科
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2012年11月12日号の雑誌 PRESIDENTでは、「健康」のジャンルの、70歳から74歳のカテゴリーにおいて、「歯科の検診を受けておけばよかった」が、後悔の一番だったと発表しています。
確かに、この世代の方はリタイア前に忙しく働かれていて、歯科医院に行く時間がなかったり、歯を失っていたり、昔の治療がよくなかったりで、歯科的に問題のある方は多いです。
しかし、寿命が延びた現在において、この世代の方々はまだまだ人生の多くの時間をお持ちですし、その間は食べないではいられないわけですから、私は、この世代の方こそ、きちんと歯をなおしておくべきだと思います。
例え、今まで何でもなくても、もしかしたら症状が出ていないだけで、すでに顕在している問題があるかもしれません。60歳半ばから70歳代に入ると、口腔内の抵抗力は低くなる傾向にあります。
これから先、お年を召してから食べることに苦労することは辛いことです。
生きていく上で「食べること」さらには「美味しく食べること」「食べることに苦痛を伴わないこと」は非常に大切なことなのです。それは、「人生の残りの時間の意味合いまで変えてしまうほどのこと」だと考えています。これは、「クオリティー・オブ・ライフ」と呼ばれ、生活の質の向上を意味するものです。
年齢を考慮した治療計画や治療は、実際には簡単ではありません。
私は現在、その患者さんの口腔内が、どのように治療すればどのようになって行くか常に考え、治療計画を立てています。2010年の大阪SJCDレギュラーコースと、2011年のAADC(Anti-Aging Dental Course)にて包括的診断法を2年間学び、トレーニングを受け、その後、更に勉強、研究してきた結果、患者さん 一人一人に対する理論的な治療計画を立てることが可能になったものです。(2015年は大阪CSTPC受講中)
ドクターの考え方や治療方針の違いは、バックグラウンドの違いです。将来の不安を取り除くためにも、診査、診断を当医院で受けてみられてはいかがかと思います。
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- 治療時間の使い方
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私の1日の仕事の時間は8時間です。もし私が、保険診療で25人の患者さんを拝見すると仮定すると、お一人にかけられる時間は19.2分です。
自由診療で5人の患者さんを拝見すると、96分で、約1時間30分です。
19.2分の間には、説明の時間、治療用椅子(ユニットと呼びます)の消毒や感染予防の為の処置なども含めますから、実際の治療の時間は15分くらいになるでしょう。
現代における歯科医療において15分でできる仕事は、私にはありません。また、残った4.2分では、十分な説明やユニットの消毒はできません。
保険診療において、昭和36年から当たり前に行われている事なので患者さん一人15分の治療に誰も疑問に思わないのでしょうか?
最近は、歯科医師よりも患者さんのほうが、その違和感を気付かれているように感じます。私は、きちんとしたことをお伝えするため、説明に最低1時間、治療に最低1時間はいただきたいのです。
時代は変わり、患者さんのニーズも変わりました。私たちが変わらなければ患者さんの口腔内は何も変わらないと思います。平成27年になりました。昭和の時代に多くの人が歯を失っていったことを繰り返すべきではありません。
私たちが自由診療になることにより、多くの患者さんの人生に貢献できることを切に願っております。
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- 歯科における保険診療の功罪
(歯科医師用) -
国は、高い保険料を徴収するが、患者さんにとって重要な事(審美的、機能的に必要な事)は保険診療内でやらせてくれない。「最低限の治療でやっておいてね!」というのが保険診療。よく考えると、平成になってから、国に財政がないので仕方ないこと。
昭和後半の時代は、まだ、歯科医学も発展していなかったので、保険でもそうでなくても、治療方法はあまり変わらなかった(もちろん歯科医師によって、技術の差は相当あったが)。また、国にも十分な財政があった。
当時は、虫歯の氾濫により、当時の歯科医師は多忙を極め、ほとんどの歯科医師は、保険診療で虫歯の治療に専念した。それにより、痛みから解放される患者さんは多く、歯科医師は尊敬される職業の一つに数えられた。
しかし、多忙を極めるあまり、患者さんの将来を考える治療をできず、その結果、日本の歯科医療レベルは先進国において、本来あるべきレベルからどんどん下がっていった。これは時代背景を考えると仕方のないことであったと思う。
矯正、インプラント、セラミック治療が確立された現代においても、どれ一つ取っても保険の適応ではない。どれも、機能的、審美的に重要であるにも関わらず、保険診療では“不必要”と考えられていること自体が大きな問題である。
また、多くの歯科医師が、これらの治療を「保険診療の延長上にあるもの」と捉えていることも問題である。使い方や考え方を間違えると全く意味を成さない。
若い歯科医師にとっては、ほとんどの先輩歯科医師から学ぶことは、むしろ少なくなっているのではないかと感じている。誰をメンターにするかによって、その歯科医師の人生も変わり、その歯科医師の患者さんの人生も変わることを確信している。
日本の歯科医療レベルが高くなり、若い歯科医師が、歯科医師として、楽しく、充実した人生を送れることを切に願っている。また、そうできれば、患者さんを真の意味で幸せにできると確信している。
- 歯科における保険診療の功罪
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- 正義とは?
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子供の頃から正義について考えています。
正義とは
- 他人を思いやる心
- その思いやりを実行する勇気と力(継続)
- 何が正しいか判断(倫理)し、それを信じる気持ち(信念)
正義は(歯科)医療に最も大切なことだと思います。
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- どのように患者さんの歯を守るか?
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技術の剣と知識の盾を持って診療に当たること。私はこれ以外に患者さんの歯を守る方法を知りません。
患者さんを守るために、その剣は切れ味の良いものでなければなりません。また、その盾は厚くて丈夫なものでなければなりません。
剣を研ぎ澄ますために、マネキンなどの練習をします。盾をしっかりしたものにするために、セミナーや勉強会、学会への参加します。
それを続けるためには、「歯を守ることに対する情熱」に突き動かされることが一番だと思います。
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- 患者さんにとって「良い歯科治療」とは?
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「良い歯科治療」とは? それについて再考してみました。
「最善の治療」とは、そのドクターにとってベストを尽くして治療を行うという意味で、そのドクターの技量や知識を超えた治療を行えるというものではありません。
プロ野球選手に例えると、一流の選手は結果を出します。二流以下の選手は結果を出せません。当然、両者ともプロですから、自分の「最善」を尽くしています。ピッチャーならボールを投げること、バッターならバットを振ること。やっていることは皆同じなのに・・・? 何が違うのでしょうか?要は、ボールの投げ方、バットの振り方が違うのだと思います。そこには、コーチの影響や、自分のやる気や努力、肉体的・精神的な要素など、多くの要因があるはずです。
歯科医師においては、知識、技量、バックグラウンド、同じ人はいません。ですから、歯科医療において、各々のドクターにとって「最善」を尽くすことは出来ます。しかし、それにより、患者さんにとって良い結果を出せるかは別問題です。私たちの仕事も、術者(選手)によって、結果が違ってくるのです。プロ野球の選手に比べると結果が分かりにくいですが、その結果は、大きな違いとして10年後や20年後に現れます。
良い結果を出すために知識を深め、技術を磨く事は、一流のプロ野球選手が素振りや、走り込みなどの地道な努力をしていることに似ています。
私も、一流の歯科医師になり、良い結果を出せるように頑張りたいと常に思っています。
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- 平均寿命と健康寿命
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「歯科の役割」
2016年現在、日本の女性の平均寿命は約86才、男性の平均寿命は約80才です。
寿命にたいして、「健康寿命」という言葉をご存じでしょうか? 健康寿命とは、「介護を受けることなく、また、寝たきりにならず自立して健康に生活出来る年齢」のことです。
日本の場合、寿命と健康寿命の差は、男女ともに約10年の差があります。ということは、平均的に、「人生の最後の10年は不健康な状態で過ごしている」ということになります。
歯の調子が良く、きちんと食べられる人は、健康寿命が長くなります。
私たち歯科医師は、的確な診断、的確な治療介入により、健康寿命を延ばすことが出来ます。(それに対し、間違った診断、治療介入は、健康寿命を短くする可能性があります)
矯正を含む、子供の頃からのメインテナンスが理想ですが、歯科医院にいらっしゃる多くの方は、30才代から60才代の間に何かしらの歯科的トラブルが起き、そこから何かしらの歯科治療を受けることになります。
その際、私たち歯科医師が、その場しのぎの治療を行うと、将来的な問題点を見逃してしまい、健康寿命を延ばすことは出来ません。
私たち歯科医師、歯科医院の使命の一つは、健康寿命を長くし、患者様のQOL(Quality Of Life:生活の質)の向上に貢献することです。歯科医師免許を持っているだけで可能になることではありません。常にモチベーションを高く保ち、日々精進・勉強することのみによって可能になるものだと確信しております。
「皆様の健康寿命を延ばすこと」この目標を持てるのは、歯科医師として幸せな事だと感じております。
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- 当院の滅菌システムについて
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何年か前に、アメリカのイリノイ州の矯正のドクターが当院にいらっしゃいました。
当院の滅菌システムをお見せしたところ、「アメリカの歯科大学の矯正科でも、ここまでの滅菌はできていない。」と言われました。嬉しかったのでよく覚えています。私がアメリカに留学中は「インプラント・歯周科」という科に在籍していました。当然、外科処置が多く、そのため、感染予防に関してはアメリカの歯科大学の中でも特に基準が厳しい所なのです。私は日本に帰ってからも、その基準をずっと大切にしております。
アメリカでは、きちんと滅菌が行われているかどうか、行政による抜き打ち検査があります。これに問題があると、何週間も治療を行う事が出来なくなります。
しかし日本には、この“抜き打ち検査”は・・・ありません。医療人としての倫理が最も問われることかも知れませんね。
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- インプラントについて
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インプラント治療は、すばらしい治療法です。しかし、使い方を間違えてしまうと、一生涯においてインプラントの数がドンドン増えていきます。“使い方を間違える”というのはどういう事でしょうか?
あなたが歯を失った原因は何でしょうか? 虫歯? 歯周病? 大まかに見ればこの2つが抜歯の原因です。
ここで、虫歯や歯周病の原因について再考する必要があります。例えば、虫歯や歯周病の原因が“歯並び”や“噛む力”だったら? その歯を失った同じ場所に、直ぐにインプラントを入れても良いでしょうか? 答えはNoです。咬合力(原因)を取り除けないままインプラント治療をしてしまうと、対合する歯に異常な咬合力がかかり、インプラントに対合する歯にダメージを与えてしまいます。
現代の歯科治療においてインプラントは必要な治療法です。欠損歯がある場合、インプラント治療がなければ長期的な口腔内の安定を望むことはできません。しかし、上記の通り、先ずは抜歯に至った原因を探らなければなりません。
歯を失った本当の原因を探るため、細かい証拠集めをする事は、事故現場の検証に似ています。検証・収集したものを統括すること。実はこれが歯科治療にとって一番大切な“診断力”です。
安易に“欠損があるからインプラント”という図式は成り立ちません。
歯を含めた口腔全体を正しく診断する事が、患者さんの安定した状況を長持ちさせる方法です。正しい診断(咬合診断)のもと、正しいインプラント治療(CTによる診断を含めた手技)により多くの方が幸せな食生活を営めることを願ってやみません。
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- お金で買えるもの買えないもの
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お金で買えない物の価値について考えてみました。
例えば
- 車は買えるけど、ドライビングテクニックは買えない
- 高価なゴルフ道具は買えるけど、ボールの飛距離は買えない
- 教科書は買えるけど、知識は買えない
- 筋トレマシーンは買えるけど、筋肉は買えない
マイクロスコープにおいては、拡大した視野は買えるけど、治療技術は買えない(技術は知識と訓練の凝集したものだから)
やはり、何か価値のある物を得ようとすると、それなりの努力が必要になるものですね。
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- トライアスロンと歯科
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トライアスロンは3種類のスポーツを克服するスポーツです。水泳・自転車・長距離走の3競技を行うわけですが、一つの競技も苦手な競技があれば、それだけ順位が落ちるわけです。ですから選手は3つ全ての競技を一生懸命練習するのです。
一つの競技をおろそかにする事もできません。いずれかの種目だけ得意でも総合的に良い結果は出ないと聞きます。一つの得意な種目に頼ることはできないとのことです。歯科医療も、トライアスロンに似ています。私たちが歯科医療をきちんと行う為には、トライアスロンと同様に、トレーニングと勉強が必要になります。
歯科の場合は、種目(科目)を数えてみると、“矯正・補綴・審美・根管治療・歯周治療・インプラント・保存・修復・口腔外科・小児”と、ざっと数えただけでも10種目あります(これから先、この種目はもっと増えていくと予測されます。※顕微鏡下治療など)。
これら10科目全てきちんと行う事は、トライアスロンに例えると、“水泳・自転車・長距離走・砲丸投げ・ハンマー投げ・走り高跳び・走り高跳び・100メートル走・ウエイトリフティング・棒高跳び”これら10種目を全て極めることと同じことです。(こうなるともはやトライアスロンとは呼べませんが)
トライアスロンは3種目を一人で行う競技です。が、トライアスロンが3種目でなく、10種目であれば、複数人でチームを作らなければ、競技として成り立たないのではないでしょうか?
トライアスロンを歯科医療に置き換えて考えた場合、ドクターの得意分野は多いほうが良いですが、10科目全てを極めることはできません。私は、歯科において、実際にできなくても 10科目を勉強し、精通する事が大切だと考えます。
それを包括して考える力が良い結果を生みます。実際に、複雑なケースを自分一人で治療する事は非常に難しく、自分が、得意でない分野は、その分野に特化して行っている人(一つの種目だけを行っている“専門医”)にお願いするのが一番良い結果を得ることができます。できないことを(知らないことを)無理に自分で行おうとする事で治療全体が上手くいかないという結果になります。
私の場合は、今の所、私自身で“保存”“修復”“補綴”“歯周治療”“インプラント”“審美”を行い、“矯正治療”は院内の矯正専門医に、“審美歯科”は院内の審美のドクターに、複雑な“根管治療・小児歯科・口腔外科”は院外の専門医にお願いしております。審美歯科に関しては、治療の幅が広く、細分化されているために、複数のドクターが更に細分化された得意分野で対応します。
ドクターの専門性が高くなればなるほど一つ一つの治療の成功率は上がります。そして、それらを統合し、包括的に考え、指揮を執ることにより、予知性の高い治療が可能になります。
私は、現在、トライアスロンの大会出場のため、トレーニング中です(最初は400メートルも走れませんでした)。しかし、努力するだけ進歩し、結果が目に見える点でも、トライアスロンと歯科医療が、実に似ていると思う今日この頃です。良い選手・良いドクターになるために。
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- ラバーダム防湿について
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ラバーダムを装着すると、ほとんどの方が「新しい治療法ですか?」と聞かれます。
実は、150年前から存在し、現代歯科医療においては、最も古い手技の一つです。ラバーダムによるメリット
唾液、唾液中の細菌を術野に入れない
細菌が歯の中に入ると、治る可能性は落ちます。一度、細菌感染を起こし、再治療を行う場合の成功率は更に低くなります。これにより
- 主に根管治療(根の治療)において、無菌的に処置が可能になる
- コンポジットレジン(白色の樹脂)修復において、接着を確実に行う事が出来る
- 術野の明示が確実になる(治療が行いやすい)
- 治療薬液の漏洩の防止
- 小器具の誤嚥(飲み込んでしまうこと)の防止(リーマーの写真)
- お口の中に水を溜めておく必要がないので楽
- 粘膜や舌の保護
- 金属を削る時に、金属片が口腔内に入らない
ラバーダムは、ちょっと聞き慣れない言葉だと思います。
日本ではあまり使用されていません。なぜなら……保険適応ではないから?おそらく違う理由だと思います。
日本の保険制度が始まり、私の記憶にある限りでは、平成20年くらいまでラバーダムは保険適応でした。しかし、どれだけの歯科医師がラバーダムを使用していたでしょうか?ほとんど皆無に近い状態だったと思います。
日本の保険制度が始まり、私の記憶にある限りでは、平成20年くらいまでラバーダムは保険適応でした。しかし、どれだけの歯科医師がラバーダムを使用していたでしょうか?ほとんど皆無に近い状態だったと思います。
人間は、一度、癖がつくと、なかなか抜けることができません。英語でも“Old habit die hard”という、ことわざがあります。英語圏の人でも、日本人でも、人間の習性は同じなのでしょう。
良い癖も悪い癖もひっくるめて、長年やって来たことを変えることは難しいものです。しかし、メリットがこれだけあるのであれば、ラバーダムを使用しない理由はないのでは?と思ってしまいます。
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- 何故、拡大して診るか
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子供の頃、アリを虫眼鏡で見たことがありますか?
私はあります。その時、アリの触角や脚に毛が生えていることを知りました。そうです、それまで肉眼で見ていた時は、そんな物は見えなかったわけです。アリだけではありません。食卓塩だって、一つ一つの粒がサイコロのような立方体になっていることや、ススキの葉の縁にある“とげ”だって、卵の殻の表面にある凸凹だって、少し拡大すれば難なく見えますが、肉眼では見えませんよね? 人間の視覚には限界があるから見えないだけで、拡大すれば見えるのです。
歯科治療も同じです。拡大してみれば、細かなところまで見えるので治療の完成度が上がります。精密治療の為には、拡大鏡やマイクロスコープは絶対的に必要だと思います。見えてない部分は治療することは難しいので。
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- 口腔内は小さな宇宙
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私が学生の時に、ある教授が、“口腔内は6cm四方の宇宙です。”とお話しされました。
当時、学生だった私にはその意味が分からず、“この教授は、少し変わっている人なのかな?”くらいにしか思っていませんでした。しかし、それから20年以上経ち、その意味を理解できるような気がします。私は、口腔を“森”のようなものだと捉えています。森の中の小さな微生物は口腔内細菌に例えられますし、森の中の木は、一本一本の歯に例えられます。また、その木を構成するものは、幹であったり、葉っぱであったり、表皮であったり、根であったり、また、その幹や葉、表皮、根を構成するのは種々の微細構造や細胞です。
森を守る為には、大きな視点(マクロ)と、小さな視点(ミクロ)が必要になります。大きな視点とは、森全体を脅かしているものがないか、しっかり見れる能力(包括的診断力)であり、小さな視点とは、例えば木の根の先にある毛のような組織を治す能力です。どちらが欠けても、森全体を守ることはできません。
「森全体を脅かしているもの」は、異常な咬合力や、特殊な細菌のことで、「根の先にある毛のような組織を治す能力」とは、治療技術や知識だと考えられます。歯科医師は、先ず、大きな視点で口腔内を見る必要があります。いくら高度な治療技術があっても、包括的診断が間違っていては、役に立ちません。また、高度な技術や知識は、正確な治療には欠かせません。どちらも大切だから、歯科医師の仕事は簡単ではないのです。
教授の言われた“宇宙”とは、そのマクロ的な部分の事だったのでしょう。宇宙とまでは言えませんが、森を知り、森を守る術を習得する事は、私たちの使命だと思います。
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- 保険外診療の考え方
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最近、国民健康保険をできるだけ取り扱わない、または、全く取り扱わない歯科医院が増えています。しかし、いきなり“日本の保険は受け付けておりません”と言われると患者さんは「なにがなんだか意味が分からないし、その価値も分からない」と思いますので、少し説明したいと思います。
歯科医療は過去10年で急激な発展を遂げてきました。おそらく、この発展が止まることはないでしょう。しかし、保険でできることは、昭和の時代から、あまり変わっていないと言っても過言ではないのです。
歯を長期的に守る為・患者さんの満足の為には、適切な診断と治療計画はもちろん、
- セラミックによる接着治療
- インプラントによるかみ合わせのコントロール
- 矯正によるかみ合わせのコントロール
- 予防
これらには保険は適応されません。それではこれらがなければ治療ができないかと言うと、そうではありません。
保険適応で銀歯を入れることも、インプラントにしないでブリッジにする事も、入れ歯にする事も出来るのですが、それらをする事により、次におきるトラブルを予測出来るようになると、そういう治療を行う事が、正しいことではないと感じてしまうのです。
値段が安いから良い治療とは思いません。逆に高くても、適切な診断・治療計画・治療技術がなければ良い治療にはなり得ません。歯科医院が多く、患者さんにとっては、「何を選んで良いのか分からない」というところでしょう。ご自身の歯の大切さをご理解いただき、慎重なリサーチが必要な時代になったと思います。
治療の必要なところは、適切な治療をする(受ける)。治療をしたら(受けたら)、定期検診とクリーニングで、疾患の予防をする。と言うのが正しい歯科医療のあり方ではないでしょうか?
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- 最初の治療の大切さ
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歯の寿命は、どのような歯科治療を受けられるかに大きく左右される事をご存じでしょうか?
例えば、本当に小さな虫歯でさえも、治療の仕方が適切でなかったり、虫歯を取り切れていなかったりした場合には、次のステップに進むことになります。次のステップとは? 更に虫歯を削ることになりますから、歯の神経を取る可能性が高くなります。
神経を取ると、日本の場合、他の先進国よりも歯内治療自体の考え方や、治療法が一般的に、かなり遅れているため、約50%の確率で根の治療の失敗が認められると言われています。が、慢性炎症のため、普段の痛みはありません。ただし、根の先周辺の骨が溶けます。また、歯自体が割れてしまうリスクも高くなります。不適切な根の治療は、歯を失う理由としてはトップクラスです。
虫歯一つとってみてもそのような重大な状況を作ってしまう可能性があります。ですから、問題が小さい内に適切な処置を行われるべきです。
適切な処置とは、計画的・材質的・医科学的に正しく、精密な治療のことです。残念ながら、日本の保険は現代科学のほとんどをカバーしません。(昭和の時代の治療で、なおかつ簡単な物はカバーされます。)ですから、適切な治療のほとんどが日本の保険ではカバーされないことになります。しかし、適切な治療を受けることにより、歯が長持ちし、それにより、将来的な出費も少なくなります。
例えば適切な処置が行われず、歯を失い、インプラント治療を受けることになれば、将来的な出費は歯の治療の何倍にもなるでしょう。ブリッジをした場合には両隣の歯を失うリスクがありますので、更なる出費になってしまいます。
先進国日本で治療を受けると言っても、その治療の仕方はそのドクターによって様々です。私は、皆様が生涯にわたって健康な口腔内を維持していけるような治療を目指しています。
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- 歯の神経の治療について
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「歯の神経を取ること」皆さんはどのようにお考えですか?
歯の神経を取り、治療する事を“根管治療”とか、“歯内治療”と呼びます。歯の神経のある歯と、神経のない歯では、その歯の寿命は相当違います。それは、治療方法によることをご存じですか?
以下は神経を取った歯(失活歯)のリスクです。
歯根が割れやすくなる(歯根が割れると歯を保存する事はできません)
理由
歯のトップの部分(咬頭)の水分が多少減り、歯がもろくなり、ヒビが入りやすくなる。- かみ合わせを感知する器官(歯根膜)の生理的感覚機能が落ちる為、かみ込みが強くなる。そのため、咬合力(噛む力)がかかりすぎ、歯が割れる。
- 歯を削ることにより、歯が薄くなり、物理的に弱くなる。
解決法
- 臼歯部には、細菌の漏洩(漏れ)のない、適合のよいクラウンをいれる。
- 金属の土台(ポスト)は使用せず、ファイバーポストを使用する。
- できるだけ内部から歯を削らない(歯を薄くしない)。
根の先に炎症を起こしてしまう可能性がある
理由
- 根管治療の難しさ・歯の解剖学的な複雑性。
- 日本の保険制度による根管治療の制限。
- クラウンや土台(ポスト)の周囲からの細菌の漏洩(漏れ)。
- 見逃し根管からの感染。
解決法
- 根管治療をきちんと行う。
- 根管治療後には、金属の土台やクラウンを使用しないで、セラミックでしっかり辺縁を封鎖し、細菌の漏洩を防ぐ。
- マイクロスコープを使用する。
これらの基準を守ることにより、例え失活歯でも、歯の寿命をいたずらに短くする事を回避できます。ただし、人間の歯は、本当に複雑なので、上記の解決法を使ったとしても、上手くいかない時もあります。その時は、「ごめんなさい、次のステップにすすみます」ということになります。あくまでも、各ステップにおいて成功率を上げるための方法であることをご理解いただきたいと思います。
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- 歯の破折について
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最近、歯の破折により来院される方が非常に増えています。特に日本で治療を受けられた方(主に日本人)とイギリスで治療を受けられた方(主にイギリス人)にその傾向が強いのです。私はその理由を次のように考えています。
- 日本の治療の場合、虫歯には主にメタルインレーと呼ばれる“銀歯”を入れることが多く、この銀色の人工物と歯が接着しないために歯の構造が弱くなっているためです。銀歯と歯は、セメントを介し、摩擦でついているだけです。
- イギリスの治療の場合、虫歯には主にアマルガムと呼ばれる“銀歯”を入れることが多く、これも歯と接着しないために歯の構造が弱くなっているためです。アマルガムと歯は、機械的な嵌合(穴をひょうたん状に掘る)によりそこにとどまっているだけです。
歯が割れる時は、徐々に割れる訳ではなく、一瞬にして割れます。歯が根の部分から割れると現在の科学を駆使しても、抜歯は免れません。
過去10年で歯科治療の科学も大きく発展し、セラミック治療が確立してきました。それはセラミックと歯のエナメル質が接着(科学的に接着し、人工物とセラミックが一体化する)することによります。歯と人工物が一体化すると、噛む力によって歯が割れるリスクを低くする事ができます。
歯の色か、銀色かと言う問題もありますが、それ以上に大切な事は、人工物を入れることにより歯を割らないということです(もちろんセラミックは歯と同じ色が再現でき、審美的にも問題ありません)。
セラミック治療は保険が効きませんが、値段が安いか高いかの問題ではありません。銀歯より、セラミックの方が歯を長期的に持たせることができるのです(人工物と歯の間からの虫歯もセラミックの方が少なくできます)。
また、興味深いのは、日本とイギリスが先進国の中で、歯科に国の保険が使用できることです。相関性がありそうですね。
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- 歯を削るということ
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歯を削る必要がある場合
- 虫歯
- 歯の欠け
- 咬合(かみ合わせ)の再構築
- 審美的要求
一般的には、歯は削らないほうが良いに決まっているのですが、削ることのメリットとデメリットを考え、メリットの方がはるかに優位であると判断した時のみに歯を削るべきです。治療にどうしても必要な場合だけ、歯を削ることは許されるべきなのです。
一度、歯を削ると、絶対に元の状態に戻りません。また、削られた歯は、元の強度を保つことは難しくなりますから、修復方法によっては、歯が割れやすくなる、2次虫歯になりやすくなるなどのリスクが発生します。
“歯を削ること”は、行為としては簡単です。しかし、その歯の年齢、形態、色、神経の大きさ、また、削らなければいけなくなった原因などをしっかり考慮したうえで、正確・精密に行わなければなりません。また、何が何でも“歯を削らなければよい”訳でもありません。
治療の必要性に応じて必要最小限に歯は削られるべきなのです。歯を削ると言うことは、非常に奥が深く、難しい行為なのです。それを踏まえたうえで治療を行えば、その歯の寿命は(歯を削ることによって)いたずらに短くなる事はありません。
特に寿命の延びた現代において、ご自身の歯をいかに守っていくか?それが、皆様の人生にとって大きく影響する事は十分に考えられることではないでしょうか?
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- 歯を抜くということ
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歯をどうしても抜く必要がある場合は、下記3つのうち、どれかに当てはまります。
- 歯根の破折
- 歯茎を大きく超えた虫歯
- 重度の歯周病
現在のところ、歯の保存が不可能とされていますが、2番の場合は、矯正で歯を引っ張り出す。又は、外科的に歯槽骨のレベルを下げる。等の処置で保存可能になる場合もあります。
例えば、
- 歯の痛みが消失しないから
- 歯茎から膿が出続けるから
という理由は、正当な抜歯の理由ではありません(上記1、2、3が原因の場合は除く)。きちんと原因を特定し、きちんと治療ができれば、多くの場合、抜歯は避けられます。
私自身も、インプラント、歯周治療、歯内治療、かみ合わせ(咬合)など、色々な勉強をしてきました。その中で、“保存できる可能性のある歯が多い”ことに気がつきました。ただ、歯をきちんと治療する事は本当に難しい事なのです。
歯の構造が非常に複雑だからです。時にはマイクロスコープなどを使用し、肉眼では見えないところを見て治療する必要があります。それでも治療した歯を100%残せるか?と言えば、答えはNOでしょう。しかし、自分の知識や、技術が足りないことにより、その可能性を0にしてしまうのは医療人として少し悲しい事だと思います。
「患者利益を考える」=「一生懸命勉強・練習する」=「歯科医師として、正しい倫理観を持つ」ということなのでしょう。
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- 数ある歯科医院から当院を選ぶ理由
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- 日本の歯科の治療法や考え方に疑問を感じている
- 過去、現在において、歯科医院通いが止まらない
- 精密な治療を受けたい
- 現在のご自身の状況を把握し、しっかりした治療を受け、将来に備えたい
- 審美的・機能的問題を解決したい。そしてそれをできるだけ永続したい
最初は、虫歯や歯茎の腫れでいらっしゃる方も多いのですが、将来のために、キチッと治療・メインテナンスを行う事を目指している歯科医院です。
当院は、2008年ころから、包括的歯科診断を取り入れ、徐々に考え方のシフトをしてきました。また、科学・歯科医学の進歩もそれに加味されてきました。2008年以前に拝見させた頂いた患者さんには、今一度拝見させていただき、状況を把握させて頂けると幸いです。
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- 抜く予定の歯について
(歯の保存の可能性について) -
- 本当にその歯にヒビが入っていますか?それをどのように確認しましたか?
- 根管治療において、ラバーダムを使用して頂きましたか?
根にヒビがある事が確認された場合には抜歯を決断する事になります。が、それ以外は、様々な方法で保存できる可能性があります。
歯のヒビは小さく、細く、肉眼で確認することはほとんど不可能です。レントゲンで歯のヒビを確認することはもっと困難です。(完全に割れて、分割されている場合はレントゲンで確認できます)では、どのように歯のヒビを確認すれば良いのでしょう? マイクロスコープ(顕微鏡)で拡大することにより、それが確認できることが多いのです。
根管治療において、ラバーダムを装着すると、根管治療の成功率が未使用の場合と比べ上がります。唾液中の細菌が治療中の根管に入ることを防ぐためです(細菌が根管内に入ることは実に好ましくありません)。
また、マイクロスコープを使用することにより、今まで“勘”や“指の感覚だった、見えない部分が見えるようになります。結果的に、治療が成功する可能性が高くなります。
上記の通り、根管治療の問題だけであれば、まだその歯を保存できる可能性はあるのです。
- 抜く予定の歯について
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- “美“と歯科的アンチエイジング
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お顔の見た目と歯並びは密接に関係しています。
- 直接的には、前歯と唇の位置、形を決めます。前歯の傾斜と鼻の大きさや、口を閉じた時の口周囲のシワなどがそうです。
- 間接的、長期的には、かみ合わせと皮膚の綺麗さ、筋肉の付き方(顔面の太さ)、顔面の長さには相関関係があります。
直接的なものは、分かりやすいと思いますので、ここでは割愛し、間接的なものを説明します。
歯並び・かみ合わせの良い方は、唇、顔面周囲の筋肉がリラックスしている状態なので、見た目の若さ(皮膚の綺麗さなど)を維持する事が出来ます。また、歯のすり減りも少ないので、顔面の高さが短くなることによる、2重アゴや、皮膚のたるみも予防する事ができます。(肥満によるものは除く)
いわゆる“老人様顔貌”(肌のくすみ・シワ・横に広がった顔面・かみ合わせによる歯の隙間や出っ歯など)と“かみ合わせ”は非常に関係があるのです。
端的に申し上げると、かみ合わせの良い方は、お年を召しても、お顔の見た目も良いと言うことになります。また、それが長続きするためには、見た目だけでなく、機能的に整合性がある必要があります。
実はこの診断が最も難しいのです。見た目だけであれば、2回か3回のご来院で直るかも知れません。しかし、これは治したことにはなりません。歯科医師は、患者さんの状態を“直す“のではなく、”治す“必要があるのです。それにより、患者さんの”美”を長期的に維持することが可能になります。
その診断に基づいた治療が、本当の意味での“歯科的アンチエイジング”なのです。子供の頃からケアできているのがベストですが、大抵の方はそうではないのが現状でしょう。40才代~60才代の方は特に、将来に向けての準備があると良いと思います。
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- 私たちの目指すもの
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私たちは、“あたり前の事を半端ではないレベルで行う事の出来る、あたり前ではない歯科医師”を目指しています。
2014年までで歯科医師になり、21年が経ちます。時間はあっという間に過ぎてしまいます。しかし、この過去10年の歯科医療の変遷はそのスピードを上回っているように感じます。ですから、私たち歯科医師は、一生懸命に知識や技術を習得しなければなりません。新しく確立された科学に基づく新しいコンセプトや知識、技術などを一生懸命に学ぶ必要があるのです。
ただ、間違ってはいけないことは、20年前の技術でも基本的な事はあまり変わっていないものです。しかし、それをきちんと出来るか?となると、その理想像は一般的に歯科医師が考えているよりも、もっともっと数段に難しく、簡単にできる物ではありません。よほどの勉強(知識)と,よほどの量の練習と、よい道具が必要です。それを新しいコンセプトに載せて応用しなければ、何となくやっている歯科医療になってしまい、いくら新しい知識があっても患者さんにフィードバックする事は出来ません。
“当たり前ではない歯科医師”とは、そういう事がきちんと学習・習得する事の出来る歯科医師の事だと考えます。
私たちは、“当たり前ではない歯科医師”を目指すことにより、きちんとした歯科医療を提供出来ることを喜びとして生きたいと思っています。
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- JIASD 補綴6ヶ月コースを終了
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平成26年12月7日(日)、大阪JIADS補綴コース(6ヶ月)を修了いたしました。補綴というのは、かみ合わせ、クラウン(被せ物)をはじめ、接着や審美などの臨床学問です。特に、かみ合わせは“咬合学”として存在し、臨床的には、数ミクロンの咬合の違いが生体に悪影響を及ぼすこともあります。その数ミクロンの違いを、どのように扱うか?その具体的な方法を学ぶことが出来、歯科医師として素晴らしい宝物を得たと実感しています。
毎月、朝早く起きて大阪に行くことは、なかなか大変なことでしたが、その労力以上の成果を得ることが出来たと思います。
歯科医師にとって学問は絶対に必要です。しかし、あまりにも奥が深いので一人で究めていくのは難しいのです。一人で勉強したり、臨床すると言うことは、夜の森を一人で歩くような物で、そこには危険が沢山潜んでいるし、そもそも遭難してしまう可能性もあります。ですから、勉強会や講習会で勉強、練習し、一緒に勉強する仲間や、導いてくれる先生を得ることが必要なのです。開業すると、“勉強しなさい”と言ってくれる人は、誰もいませんし、日本の場合、アメリカなどの諸外国と違い、勉強会や講習会、または学会参加によるクレジットを取らなくても歯科医師免許の停止などはありませんから、勉強は完全に自主的なものとなります。
歯科医師は、生体、特に歯を扱うという仕事の性質上、安易に“医療行為”を行ってはいけないと思います。歯は一度削ると絶対、元に戻りません。もし、歯を削ることが必要な時は、適切に行われなければなりません。そのためには、しっかり考えられる知識と、きちんと行える技術が必要なのです。
歯科医学は、本当に、本当に奥が深いのです。
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- 歯科治療のお試し?
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歯科治療は、車の試乗や洋服の試着のような、“お試し”が出来ません。
歯科治療のほとんどが不可逆的(もとに戻らない)ですから、誰も自分の体で、“お試し”はしたくないはずですよね。
治療後、上手くいかなくて(何ヶ月か後、数年後にトラブルになって)再治療をしなければならないケースがあります。これを“リカバリーケース”と呼びます。(大体、そういう患者さんは他の歯科医院に行かれます)。
通常、リカバリーケースは、そうでないケースと比べて、治療が大変になりますので、それを治すのに時間もお金も余計にかかります。ですから“お試し”の後に“リカバリーケースになるのは、患者さんにとって大きな経済的・肉体的・精神的な負担になります。
私が初診で拝見する患者さんの中には、こういう事を繰り返してきて、肉体的にも精神的にも疲れ果てている人も見受けられます。こういう患者さんを見ると、ちょっと、気の毒になってしまいます。
治療の善し悪しを見分けることが患者さんに出来ると良いのですが、それは無理だと思います。その理由を端的に申し上げると、患者さんは歯科医療に対しては「素人」だからです。プロである私たちでさえ、他のドクターの善し悪しは、その仕事の詳細を見て、歯科医療について語りあい、初めて分かるものです。
そこで、提案があります。少し、意地悪な(懐疑的な)気持ちになって、ウェブサイトなどで、歯科について勉強してみてはいかがでしょうか?
例えば、”根管治療””自由診療 専門 歯科”などが検索ワードでしょう。何故それらが良いかというと、歯そのものを保存したいと切望している先生のホームページにたどりつける可能性が高いからです。その中で、他に気になるワードがあれば、それを検索するのも良いと思います。中にはコマーシャル的なホームページや、一部、間違った認識をされている先生方も見受けられますが、大体の先生方は同じ認識になっていると思います。
昔みたいに、お口を開けて「先生におまかせ」と言う時代はすでに終わっています。ご自身の体の事ですからご自身で判断されるのが一番良いと思いますが、それには予備知識が必要だと思います。
皆さんが幸せになれますように、切に願っております。
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- 各ドクターが、専門的治療に特化する理由
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現代の科学が非常に発展したことに付随し、歯科医学も発展、細分化しております。
咬合治療(かみ合わせ治療)、根管治療(根の治療)、審美治療、義歯、インプラント、虫歯治療、歯科矯正、歯周病治療、口腔外科、などです。それらは、専門性を持って治療が行われるべきです。例えば、医科で例えると、眼科のドクターは胃の手術は通常行いませんよね?
歯科は、いままで“歯科”として、ひとくくりで考えられ、一人のドクターによって行われることが常識的でした。しかし、科学の進歩と共に、各々の治療の専門性が高くなると、全ての治療を一人のドクターで網羅する(きちんと治療する)ことは難しくなってきました。
私たちは、口腔内を一つの器官ととらえ、患者様の問題点を抽出し、その問題点に対し、各々のドクターが専門性を持って治療にあたる、包括的治療を目指します。ドクターが専門性を持つことで、
- 最新の情報を得やすくなる(セミナー出席:全ての科のセミナーに出ることは不可能)それにより、その治療の知識や技術を高めることができる
- ドクターの勉強やトレーニングへのモチベーションが上がる
上記により、予知性の高い治療が期待出来ようになります。
患者さんにとっても、私たちにとっても、治療の結果がきちんと出て、それが長期的に維持することが最も大切なのです。
私たちの専門外の事や、他のドクターの方が予知性の高い治療が期待出来る場合には、そちらをご紹介いたします。それが本当の、歯科医療における“患者利益”だからだと考えているからです。
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- 歯科治療が上手くいかない理由
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- 治療する時、細かい部分が(肉眼で見えない部分)が見えていない。
- 問題の原因が見えていない。
- 筋肉、骨格、咬合(咬み合わせ)など、大きな部分が見えていない。
- 歯科医師が自分の技量を超えた事をする場合。
- 患者さんのプラークコントロールが出来ていない。
- 患者さんに全身疾患がある。
体の事ですから、歯科治療が上手く行かない時は、他にも理由はあるかも知れませんが、上記を網羅すれば、ほとんどの歯科治療は上手く行くはずです。
1~4までは、歯科医師側の問題。5番と6番は患者さん側の問題です。
そう考えると、歯科治療はシンプルに見えるのですが、歯科医師が1~4を網羅する事は、それ程楽ではありません。練習や勉強をするにしても、最初は、あまり楽しくないのが普通だと思います。また、昔の(平成20年くらいまで)私がそうであったように、義務感で勉強や練習している間は、あまりその成果が出ないように感じます。スポーツもそうであるように、上手く出来るようになるまでは、あまり楽しく感じませんよね。でも、一度楽しくなると、どうでしょう?はまっちゃいますよね~?
そうなると、今まで辛いと感じていた練習や勉強が辛くなくなり、希望や将来の展望を考えるとワクワクするようになります。それを患者さんに理論的な 診断や、精密な治療でフィードバック出来た時に初めて、私たちと患者さんの満足に繋がるのだと感じます。
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